特別対談 「シンプルだけど深い。インデックスの世界」
2025年8月30日に開催した、第5回 eMAXIS ファンミーティングは、弊社が監修協力した『地球の歩き方 オルカン』の発売を記念して、東京・代官山の蔦屋書店でのオフラインおよびオンラインで実施されました。ここでは、プログラム「シンプルだけど深い。インデックスの世界」の模様を、レポート形式でお届けします。
当プログラムでは、同じく『地球の歩き方 オルカン』を監修協力したMSCI Inc. 日本代表 寺沢 亮也様をお招きし、弊社 特別業務顧問 オルカン・アンバサダー 代田 秀雄が、参加者のみなさまからのさまざまな質問にお答えする形で対談を行いました。



- MSCI Inc. 日本代表
- 寺沢 亮也様

- 特別業務顧問 オルカン・アンバサダー
- 代田 秀雄
注記) 下記の内容はそれぞれ参加者個人の意見であり、当社の見解ではありません。また、将来の投資成果を保証等するものではありません。投資に関する決定はお客さまご自身のご判断と責任のもとに行っていただきますようお願いいたします。
※当ページでは、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)を、愛称「オルカン」で呼ぶことがあります。「オルカン」は当社の登録商標です。
MSCI Inc.とは?
・ニューヨーク証券取引所に上場している指数算出会社で、オルカンのベンチマークである「MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス」※(MSCI ACWI)を算出している
・MSCI ACWIの構成銘柄のひとつにはMSCI Inc.も!※
・投資の未来を支えるインフラとしてグローバル市場に貢献することを使命に、中立性を保ちながら、独自の視点で分析して投資家のみなさまへ指数を提供している
※オルカンはMSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス(配当込み、円換算ベース)に連動する投資成果をめざして運用を行います。
※第7期運用報告書時点
みなさまからの疑問・質問に回答!
インデックス投資といえばほったらかし投資が代名詞ともいわれる世界。そんなインデックス投資をもっと知っていただきたいと、その裏側や深みついて、インデックスのプロがみなさまからいただいた質問にお答えしました。
市場が不安的なときこそインデックス投資が良い?アクティブ投資との違いは何ですか?

弊社会長兼CEOのヘンリー・フェルナンデスも、今年4月の来日時に「市場が荒れているときこそ、市場全体の動きに直接連動するインデックス投資へのニーズが高まる」と語っていました。アクティブ投資というのは、アクティブなことをすること(=よりリスクをとること)によって、高いリターンを目指すということでもあると思うのですが、やはりマーケットのボラティリティ(市場の変動率の大きさ)が高まる局面は、投資家のみなさまの目線も、いかに自分の資産を守るか、また、リスクを抑える方向への動きが生じるなどあり、インデックス投資が選ばれるのかなと思います。

アクティブ投資は、個別銘柄の選定によって市場平均を上回るリターンを狙いますが、市場全体のリスクに加えて、銘柄選定のリスクも取るわけです。インデックス投資は主に市場全体のリスクなので、そのような動きになるのだと考えます。
全世界株式指数は海外でどの程度認知されている?

実は、弊社が提供する指数に連動する海外ETFの残高は、ここ数年で急激に伸びています。特に、EAFE(イーファ)という、アメリカおよびカナダを除く世界株への資金流入が顕著で、世界分散を志向する動きが高まっている表れだといえます。
弊社の指数に連動した投資商品の時価総額は、現在17兆ドルほどであり、これは日本のGDPの約4倍強に相当します。機関投資家、個人投資家、両方の話ではありますが、世界株投資は、多くの方にとって注目されるテーマになってきているのかなと思います。

厳格な選定基準が生む、優れたインデックス運用力
eMAXISシリーズがMSCIの指数を採用したのはなぜ?

日本市場においては、年金基金などの機関投資家がMSCIをベンチマークとして使うケースが非常に多いですよね。

MSCIは単なる指数提供だけでなく、流動性や投資対象の選定基準が非常に厳格です。弊社では20万以上の指数を日々計算しており、リアルタイムで1万6,000以上を配信しています。その裏には膨大なデータ管理とオペレーションがあり、その堅牢化が肝と考えて、課題感をもち、テクノロジーへの大きな投資もして自動化等を進めています。

運用のしやすさや事務オペレーションの安定性を踏まえて、MSCIの指数を採用したのだと思います。今後ともよろしくお願いします。
新しい指数をベンチマークとする商品を開発していますか?インデックス投資によってダメな企業が淘汰されないといわれている点について、どのように考えますか?

先ほども申しましたが、弊社では20万以上の指数を管理しており、ニーズに応じて新しいものも生まれています。
インデックス投資によって、企業が淘汰されないという見方もありますが、それは指数の設計次第ではないかと思います。たとえばMSCI ACWIは、世界の上場企業5万社以上のなかから、流動性や運用の安定性を重視して約2,500社※に絞り込んでいます。世界の大きな機関投資家のみなさまが滞りなく運用ができるよう、厳格な基準で選定しています。より厳格に銘柄を選定したい場合は、設計をカスタムすることも可能です。
※2025年8月末時点

指数自体が銘柄選定の基準を持っているということかと思います。マーケットと連動することを担保しながらどうやって主要銘柄を選ぶか、価格形成面で市場を歪めないように指数の銘柄入れ替えをするかについては、神経を使われているのではないでしょうか。

一定のルールベースで行うことは透明性が高いという、非常に重要な目線でもありますので、最初にルールを作るときが非常に気を遣いますね。
オルカンの国の選定基準は?

『地球の歩き方 オルカン』では世界47か国・地域※を取り上げておりますが、「どういう国を入れるか?」も重要になってきますよね。
※2025年8月末時点

その国の時価総額の大きさもひとつの要素ですが、それに加えて「実際に取引できるかどうか」もあります。通貨規制や外国人投資家への制限がある国は、流動性が低くなりがちで、取引コストも高くなり指数に組み込むのが難しくなります。1回買うと銘柄の定期見直しや時価総額加重によるウェイト調整でその後も売買の必要性が発生することもあるので、過大な負荷なくトレードができることが担保されていることが重要です。

公設の証券取引所が整備されていて、流動性が高くて、海外投資家にも開かれている市場は意外に少ないんですよね。オルカンの場合、数百億円単位で資金が動くため、国の選定には慎重にならざるを得ませんよね。

これからのインデックス投資の行方
特定銘柄への集中が分散効果に与える影響についてどうお考えですか?

オルカンの特徴のひとつには、アメリカだけでなく、グローバルに地域分散されている点があります。銘柄分散も含めてですけれども、分散効果はあると思っています。

アメリカ集中という点については、10年前と比較して、アメリカのウェイトは高くなっていますが、イギリスや日本の割合は下がっているんです。これは日本が成長していないわけではなく、過去10年間、GAFAMなどを筆頭にアメリカ企業の時価総額が増加していることや、為替が下がっていることから、相対的に日本のウェイトが下がっていると見られます。このあたりは、『地球の歩き方 オルカン』にも載っているので、ぜひご覧いただければと思います。
また、一国集中は、歴史的に見ても初めてではありません。過去にも似たような状況はありましたし、今のアメリカへの集中も、経済サイクルの波の中で結果としてそうなっているだけだと考えています。
インデックス投資といってもいろんなタイプがある?

インデックス投資といってもさまざまなタイプがあり、私は「インデックス三世代」と呼んでいます。第一世代は、日経225やNYダウなどの、株価を単純平均して算出する「株価平均型」です。第二世代は、S&P500やMSCI オール・カントリー・ワールド・インデックスなどの、企業の規模を反映する「時価総額加重型」です。そして第三世代は、スマートベータや特定の戦略にもとづく指数です。ただし、市場ということを考えると、一定程度集中が見られたとしても、それが市場なので、市場通りに運用し市場と付き合うということはやはり時価総額加重で考えるのが一般的であり、そこから入るべきだとは思います。
また、最近は、アクティブ運用とインデックス運用の境界が曖昧になってきていますよね。第三世代は、指数によって、第二世代の時価総額加重を上回ろうとする試みが出始めています。

おっしゃる通りです。アクティブ運用における「アルファ(超過収益)」の定義も細分化されてきています。例えば高配当銘柄に投資することも、代田さんのお言葉を借りれば”第三世代の指数”で実現できるようになっています。指数の形でも、投資スタイルに応じた商品提供が可能になってくると思います。

本日はどうもありがとうございました。
市況動向および資金動向等により、上記のような運用が行えない場合があります。
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